町のひとに訪ねてみると、伊勢大神楽の一行らしい。お伊勢参りに出かけられないひとのために神の使いが代わりに参拝、授与された神札を配りに地方の町や村を巡る。獅子舞と曲芸を披露しながら、無病息災や家内安全のお祓いをする神事である。江戸時代から行われており、無形民俗文化財に国から指定されている。
伊勢大神楽が岸和田市内を回檀するきっかけを作ったキーマンは、篠笛奏者・森田玲さんのようである。
森田さんブログの記載によれば、岸城神社での大神楽は平成15年に始まった。「昔はお伊勢さんから獅子舞が来ていたけれど、来なくなって寂しい」という話を何度も耳にしていた氏は、何とかして泉州地域への再訪を復活させたいと思い、岸城神社での「総まわし」を提案。岸城神社の賛同を得て再訪が実現し、市内の町々を巡るようになった。
岸城神社は、岸和田だんじり祭の核となる神社。だんじりが市役所横のこなから坂を駆け上がり、岸和田城のお堀端を巡りながら宮入りする先の神社である。
岸城神社は、岸和田だんじり祭の核となる神社。だんじりが市役所横のこなから坂を駆け上がり、岸和田城のお堀端を巡りながら宮入りする先の神社である。
森田さんは岸和田高校出身、京大卒。岸和田高校は岸和田城のお堀端、岸城神社の隣にある府立高校である。伊勢大神楽との関わりの詳細は、下記ブログ参照。
◎篠笛奏者・森田玲のブログ
小学生くらいの少女の「よろしくお願いします」という声に導かれて、神楽の一行は紀州街道から海側へ路地を入り中町だんじりの前へ向かう。
中町だんじり前で、伊勢大神楽の獅子が舞っていたのにも理由がある。中町在住、だんじりなどの木彫を行う彫り師・河合申仁さんが、獅子頭の面を制作している。面の制作を仲介したのが、上記の森田さんである。詳細は下記ブログ参照。
◎木彫刻「賢申堂」河合申仁のブログ
獅子頭は、みごとな出来映えである。
河合さんの仕事柄、精巧なだんじり彫刻や上だんじりの獅子噛み・鬼熊なども手がけているはずなので出来のいいのは当然か。
河合さんの仕事柄、精巧なだんじり彫刻や上だんじりの獅子噛み・鬼熊なども手がけているはずなので出来のいいのは当然か。
神事の最後に、子供たちの頭を獅子が噛み、子供が健やかに育つように祈願。だんじりの曳き手の大人たちも、獅子に噛んでもらい苦笑いしている姿が微笑ましい。悪霊払いの安全祈願である。
夏祭りのお囃子やだんじり囃子の源流も、この伊勢大神楽にあるらしい。
夏祭りのお囃子やだんじり囃子の源流も、この伊勢大神楽にあるらしい。
伊勢大神楽と、岸和田だんじり祭。ふたつをつなぐ赤い糸は、苦楽を共にするひとびととの絆を愛おしみ、幸多かれと願う思いかも知れない。
たまたま訪れた岸和田で、めったにお目にかかれない伊勢大神楽にであう。ちょっとうれしい一日であった。