歌手「さだまさし」の素晴らしいステージをNHKのテレビ番組(BS1で6月16日放映)を録画でみた。
番組タイトルは「さださん、あのね:公開復興サポート 明日へin大船渡」。
東北大震災に関連した優れたドキュメントを、NHKは数多く放映しているが、「さだまさし」のこの番組もその1本である。
例えば、三陸地方を舞台にした朝ドラ「あまちゃん」で有名になった、感嘆符「ジェ」。これと同様に、よく使われるの感嘆符が「バー」であるらしい。
大船渡エリアでの方言やさんまラーメンの話題などに次いで、頭がツバキになっているご当地PRキャラ「おおふなドン」も紹介される。
震災がらみのメッセージもいくつか紹介された。
例えば、今年の震災記念日3月11日のエピソード。追悼の意味で当日はおやつを止めにしようとしたところ、6才の孫娘がメロンパンを食べたいという。
幼児には理解できないかと思い買ったパンを、孫娘がちぎり分けて祖母に手渡し「津波でなくなった人に届くよう、仏様にたのんでちょうだい」と依頼したそうである。健気で微笑ましく、しかしまた、泣かせるエピソードでもある。
あるいはまた、夫婦ふたり「さだまさし」ファンでコンサートをいつも聴きにいっていたが、夫を震災でなくしたという婦人のメッセージも印象的である。
震災を思い出すのが辛くて、震災後は「さだまさし」の歌を一年ほど聴けなかったそうである。亡き夫が大好きだったのが「奇跡〜大きな愛のように〜」という歌。間に別のエピソードや語りを挟んで、唐突とも思えるタイミングで、婦人の手元にかかげられた遺影に語りかけるようにその「奇跡」を歌い始める。
歌いはじめる前に、さだまさしが語ったことばがこころに残る。
「津波の災害を通して、私たちが教わったもの」として「さだまさし」が語ることば=「今日生きている命というものは、確かなものとして保証されているものではなく、奇跡が積み重なって存在しているもの。今日の命を惜しまずに生きて行かないと、明日がある保証は誰にもない」と。
一瞬のうちに運命が変わってしまう、はかない、しかし掛け替えのない命についての「さだまさし」の感懐が胸を打つ。
さすがプロフェッショナルと感じさせたのが、絶唱と思われる「奇跡」を歌い終えた後、フィナーレの一曲として「道化師のソネット」という曲を歌ったこと。観衆の手拍子も混じり、歌詞もリズムも明るい歌である。
感動的な歌「奇跡」ではあるが、追悼歌に近い歌である。しんみりとした気分ではなく、明るく元気な気分で観衆を送り出したいという「さだまさし」の配慮であろう。シブイ仕事人である。
「奇跡」が歌われた動画がYouTubeに掲載されているので、最後に紹介しておきたい。