だんじり祭といえば、岸和田が代名詞。中でも旧市内のだんじり祭が有名であるが、9月の祭礼のほかに10月の祭礼もあることは、地元以外ではあまり知られていない。9月のだんじり祭は浜手地区がメインであるが、10月のだんじり祭は山手地区を中心に行われる。
10月の岸和田山手だんじり祭の中では、八木地区の行基参りが断然興味深い。
だんじり祭は神社の祭礼であるのは「常識」。しかし、行基参りではお寺に参詣して「宮入」するのがユニークである。
久米田寺の境内にやり回しをして宮入 |
多宝塔・本堂を背景にして並ぶだんじり |
行基は、奈良時代の高僧。当時は一般民衆への布教が禁じられていたが、禁を破って布教活動を行った。貧民救済事業や、農業用の溜池開削や堀溝などの治水事業、架橋などの土木事業などを展開した革命家ともいえる人物。朝廷からはたびたび弾圧されたが、民衆の圧倒的な支持を受けていることが聖武天皇に認められて、東大寺の建立にも寄与した立派な人物である。
八木地区では、大阪府最大の溜め池・久米田池を開発して田畑の灌漑に大きく貢献した。兵庫県伊丹市の昆陽池、大阪府大阪狭山市の狭山池も行基が開削したものである。
行基が創設した寺院・久米田寺が池のほとりにある。周辺の町々のだんじり13台が、その遺徳に感謝してお堂に参詣するのが行基参りである。高台にある久米田寺に向かって、早朝から曳き出しされただんじりが、ふもとの各町から上ってくる。
朝9時、久米田池のほとりから久米田寺へ向かってやり回し。威勢良く宮入が始まる。
はじめのうちは余裕のあった境内の敷地も、次から次へと宮入するだんじりと曳き手たちでどんどん埋まってくる。
はじめのうちは余裕のあった境内の敷地も、次から次へと宮入するだんじりと曳き手たちでどんどん埋まってくる。
曳行用に空けられた狭い進路を、巧みに使って疾走するだんじりの姿は見事。
最後は13台のだんじりが、寺院の敷地内に収まってしまう。多宝塔や本堂など、お寺の建物を背景に幟旗を立てて装った多数のだんじりが勢揃い。
大屋根に乗った大工方や子供たち、だんじりを取り囲む法被姿の町衆たちが談笑する光景は、微笑ましく幸せな時間を満喫できるひとときでもある。