数年前、長谷寺の紅葉見物をしたときに、次は訪ねてみたいと思っていたのが談山神社。 奈良県、桜井市。大化の改新で活躍した藤原鎌足ゆかりの神社である。ちなみに、拝観窓口で渡されたリーフレットによれば、談山の読みは「たんざん」であった。「だんざん」とばかり思っていたが、勘違いである。中旬から下旬に見学に行こうと考えていたが、神社のホームページを見ると11月17日が例大祭。舞楽が奉納されると記載されている。天気予報は雨であったが、雨の紅葉も一興と考えて参拝にでかけることにした。
11月17日、年に一度の談山神社例大祭・奉納舞楽を拝観
目当てのひとつ、例大祭の開始は10時半からとなっていたが、電車の乗り継ぎに手違いもあって到着したのは10時45分頃。 本堂で例大祭が始まったところと聞いて、急いで本堂へ向かう。幸い、舞楽は11時半頃から奉納されたので、拝殿の廊下から拝観できた。例大祭で奉納された舞楽 |
大化の改新当時の鎌足公を、再現しているのだろうか。赤い衣装を身につけた演者は、剣を持って舞う。座敷前列の人々もビデオや写真を撮影しているが、絵柄の構図としてはあまりよくないのが残念。
正午頃に例大祭がお開きになった後は、紅葉見物。一時小雨がちらついたけれど、幸い曇り空。境内の見事な紅葉を、ゆっくりと見物できた。
手前左右に紅葉、左奥にそびえるイチョウ大木を背にした十三重塔の優美な姿
中でも、十三重塔周辺の紅葉が見応え十分。本殿から見ると、十三重塔の左右手前に紅葉、左奥権殿の背後にそびえるイチョウの大木の黄葉があざやか。
塔の檜皮(ひわだ)葺きの黒っぽい渋い茶、塗り壁の白、柱や軒下の垂木などの赤に、樹々の葉の緑・赤・黄が点描のような濃淡を示しながら彩りを添える。風にふかれて揺れる、樹々の葉が優美である。
十三重塔 |
左・十三重塔、奥・権殿 |
談山神社は、飛鳥時代に建立された古い神社である。
十三重塔は、678年に鎌足公追悼のために息子が建立したもののようだ。701年に、鎌足公を祀る神社本殿が建設されている。明治の神仏分離令の以前は、神仏融合の寺院兼神社であった。
十三重塔の西には、権殿(儀式殿)。建物西のイチョウ大木の下には、奥の山から流れる疎水があり小さな滝になっている。
権殿の階段を下りると、けまりの庭。庭に面して、神廟拝所と総社拝殿が配置されている。
総社拝殿・福禄寿 |
権殿前の小さな滝 |
ノミで削り出された木像であるが、独特の風貌が味わい深い。円空の仏と同じように、荒削りな感じが好ましい。開運出世、福の神にふさわしい親しみ深い表情である。
七福神は、ヒンドゥー教・仏教・道教と日本の土着信仰がいりまじって形成されたようであり、和を持って尊しとなす日本らしい神仏習合の神さんらしい。
境内の西端まで紅葉を見物して、再び十三重塔の方へ引き返し本殿の前に帰った2時過ぎ、とうとう雨が降ってきた。拝殿床下の回廊部分で、雨宿り。小雨がやがて、かなりきつい本降りの雨に。帰り支度をして、山門から本殿へ続く長い急坂になった石の参道階段を降りる。急な下がり上がりになった山道をたどって、バス停へ。雨天の予報にも関わらず、例大祭の奉納舞楽と、紅葉見物を楽しむことができて幸い。十三重塔まわりの光景が記憶に残る、いい一日であった。
■談山神社
<追記> 帰宅後、ネットで調べてみた。総社拝殿の木像・福禄寿は、大阪芸術大学教授・斎部哲夫さんの作品のようである。比較的最近に作られた木像のようなので驚いた。ほのぼのとした福相、好感がもてる作品である。