昨年は宵宮・夜の灯入れ曳行が雨天に加え落雷のため中止になったけれど、日中の曳行は基本的に雨天決行である。
今年2013年の本宮も宮入りの途中から、かなりキツい雨となった。
傘をさしての見物は禁止のため、屋根付きの通路がある南海電車岸和田駅前に移動して曳行を見学。1時前から宮一番・宮本のやり回しで午後曳行が始まった。
曳行開始を少し過ぎた頃から、かなりキツい雨となり曳き手たちもずぶぬれ。足場が悪いし、だんじりもかなり重量をまして曳行は苦痛のはず。しかし、曳き手は威勢の良い掛声と共に綱を引き、大工方は大屋根の上を好天の日と変わりなく飛跳ねている。
曳き手の主役は青年団であり、彼らが頑張っているのは理解できる。しかし、感心するのは子供たちの奮闘である。中学生はもちろん、小学校低学年の子供たちも必死になって綱を引いている。苦しい表情になっている子もいるけれど、凛々しい表情の子も多く、時には笑顔を浮かべたりしている子もいる。
ずぶぬれの少女 |
少年団の子供たち |
子供の付き添いとして曳き手の横を並行して走ったり、だんじりの後尾を駈けるお母さんたちの頑張りも素晴らしい。
病気になったら困るから、子供たちに雨風の中を綱を曳かせたくないというのはごくふつうの親心であろう。祭の世話役や若頭たちも、本音の部分では子供たちに曳かせたくないかも知れない。
綱先を曳く少年団 |
やり回しのキーマン前梃子 |
しかし、子供たちが雨風の中を曳くのをあえて認めているのはなぜか。
子供とはいえ、町が一体となって催行する祭を支えるかけがえのない一員として認めている証だからではないかと思う。
イギリス生まれ、紳士のスポーツとされるラグビーやサッカーも雨天決行である。試合をするのは紳士の約束。天候が悪いから言って、約束の日時に試合しないような人間は紳士たるものの資格がない。
だんじり祭も同じく、複数の町が一体となって行う吉例の祭事。ひとつの町だけが、イチ抜けたでは済まされない行事である。
ラグビーには、だんじり祭と共通すると思われるいくつかの名言がある。
以下、「ラグビーに関する豆知識」からの引用である。
例えば「One for All , All for One。ひとりは皆んなのため、皆んなはひとりのために」。自己犠牲の精神は、ラグビーの基本であり、だんじりもまた同じ。
あるいはまた、元フランス代表キャプテンのジャン・ピエール・リーブ氏の有名な言葉「ラグビーは子供をいち早く大人にし、大人にいつまでも子供の魂を抱かせる」。
明治大学・神戸製鋼で活躍した大西一平氏の次のような言葉も忘れがたい。
「ラグビーって痛いしきついし危険だし、人間性がよく見えるんですよ。なぜならば、ボールを持った選手は敵陣に突っ込んでいかなきゃいけないし、相手が突っ込んでくればタックルに入らなければならない。けれども他の選手は0.0何秒わざと遅れることで痛い思い・怖い思いをしないですむ。恐怖感が増せば増すほど、勇気とチームメイトへの信頼感が要求されるわけで、人間同士の深いつながりが確認できるんです」と。
雨の日のだんじり曳行も、また同じことが言えるのではないか。
■ラグビーに関する豆知識
最後に、観客のマナーについてひとこと。傘を差して見学しているひとがおり、警備のマイクで警告されても平気で差し続けている。傘を差していないひとを濡らしたり、混雑した人混みの中では他人を傷つけたりする危険がある。視界をさえぎられ、前を見渡せないのも困る。厚顔無恥というほかはない。